安楽死

(以下、毎日新聞より引用)
富山・射水の呼吸器外し:外科部長と患者家族、「同意」で食い違いか
 富山県射水(いみず)市の射水市民病院(麻野井英次院長)で患者7人が人工呼吸器を外されて死亡した問題で、呼吸器外しを指示した外科部長(50)=3月31日で退職=から、県警が既に任意で事情聴取していたことが分かった。病院側から関係書類の任意提出も受けていた。一方、部長が人工呼吸器を外そうとして問題が発覚するきっかけとなった別の患者のカルテに「家族の同意」と記載があったのに、家族が延命治療の中止について同意していなかった可能性が出てきた。
(引用終わり)

連日取り上げられているこの問題。
「安楽死」というものの概念そのものが若干分かりにくくなっているので、説明してみたい。

広義の安楽死とは、死期が迫っていることが明らかな場合に、患者の苦痛をやわらげるために、一定の条件の下にその死期を早める、あるいは死期を人工的に延ばすのを止めることをいう。
広義の安楽死には、末期患者から人工的な生命維持装置をはずす治療行為の中止(尊厳死)と、死期の迫ったしかも苦痛の甚だしい患者の苦痛をやわらげるためにモルヒネなどを投与したり、積極的に死期を早める措置をとる行為(狭義の安楽死)がある。
狭義の安楽死の中の、死期を早めないモルヒネの投与などの行為を間接的(消極的)安楽死という。

今回問題になっているのは、治療行為の中止、いわゆる尊厳死である。
しかし、狭義の安楽死の場合には、患者の同意を要件として(それだけではないが)正当化される可能性もあるが、尊厳死の場合には、患者の意思確認ができない場合が多く、正当化される場合はきわめて少ない。
ともすると、治療行為の中止は、ある意味不作為であるので正当化されやすいかのごとく思われるが、患者の同意という観点からすると、積極的に死を迎えさせる安楽死(狭義)の方が正当化されやすいことになる。

今回は、やはり患者本人の同意は無いようで、家族の同意の有無も怪しい。
ということで、刑法上この医者の行為が正当化される可能性はきわめて低いといわざるを得ない。となると殺人?

ただ、尊厳死の問題は、脳死の問題とも絡んでおり、形式的な判断だけで「殺人」だなどとは言えない。
まあでも、正当化されるのは、延命措置はしないでくれ、といった本人の冷静な判断に基づく意思があらかじめなされており、それが明確に確認出来る場合に限られる感じがする。
それとやはり、こういう場合は二人以上の医師の判断が必要な気もする。
いずれにしても悩ましい問題。
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Commented by 素町人@思案橋 at 2006-03-28 09:46 x
 突然で恐縮ですがご招待です。
「富山の射水市民病院のニュース」に関するクイズを作りました。
「尊厳死と安楽死。ふたつの違いがわかりますか?」という記事です。
問題は、状況を設定し、もしあなたが医師だとしたら、どんな行動をとるかを問います。
回答の選択肢が5つあります。
答えは→ http://q-q.at.webry.info/200603/article_94.html
他にも500問ほどのクイズがあります。退屈で死にそうな折りにどうぞ。
(ご迷惑でしたら、お手数ですがコメント、TBの削除をお願いします)
Commented by black_penguin at 2006-03-28 23:21
>素町人@思案橋さま
ご迷惑などとおっしゃらず。
安楽死、尊厳死の定義にはいろいろあるようですが、今回の投稿は、前田雅英著「刑法各論」に従いました。
by black_penguin | 2006-03-27 23:51 | 時事関連 | Comments(2)

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