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否認

この間、民事の法廷で、自分の事件の順番が来るまで別の件の弁論を傍聴していたところ、ちょっとアレな(アレ、という用語は、某参事官のTwitterより引用)やり取りがありました。

一通り書面の提出や書証の取り調べが終わったところで、じゃあ被告はどうしますか、という裁判所の問いに、代理人が、主張の内容が全然分からないので、反論しようがない、みたいなことを言っていました。

すると裁判所は、原告側に、他に主張するところは無いのですか、と問います。
背景事情のようなものも主張してもらわないと、事件が全然分からないと。

と、原告代理人は、「否認する」と主張するだけで十分だ。と自信ありげに。

裁判所は困った感じで、「否認する」とあるだけだと、何だか全然分からないと。

どうやら、答弁書に対する認否、反論の準備書面が、例えば、準備書面第1項、1は否認する、としか書いていないらしいのです。

全然分からないと言われた原告代理人は、「こちらも事実関係が分からない」と言い放っていました。
事件の内容は分からないと言われても、原告側ですからねぇ。どうして提訴したのでしょうか。

裁判所も、そういう場合は釈明を求めて下さいと、少し呆れた感じに。

すると原告代理人、じゃあ陳述書を提出しますと。

これには、裁判所も被告代理にも仰天。「もう陳述書ですか」みたいな。事件の内容分からないんじゃないですかと。

最後は、仕方が無いので、分かる範囲で反論して下さいと被告代理人に「お願い」して、その期日は終わっていました。


そんなに新人には見えなかったですが、新人なんでしょうね。
私も人のことは言えないですが、民事訴訟規則では、「準備書面において相手方の主張する事実を否認する場合には、その理由を記載しなければならない。」(79条3項)となっていますし、民弁の授業では、「民事弁護では、単に要件事実骨子だけ書くのではだめですよ。背景事情というか事件全体のことも書かないと」と指導されたので、さすがに、「否認する」とだけ書いてあと何も書かないみたいな準備書面は、弁護士になり立ての時から作っていないと思います。

確かに、弁護士の大増員で、即独なども増え、先輩弁護士の指導を受けにくくなっている状況にはありますが、これは一種センスの問題でもあり、また、きちんと研修を受けていればできるはずで、指導を受けてはじめて気づくような問題でも無いと思います。

この間も、訴状で、本人が書いた文書をちょっと「である」調に直した感じの、ただ事実経過をグダグダと羅列しただけのにお目にかかりましたが、こちらも若手の弁護士でした。

まあ人のことは言えないし、古株弁護士でもとんでもない書面作る人は多いので、一概には言えないのは分かるのですが、やはりちょっとアレな感じの若手弁護士が増えているのは確かな気がします。
by black_penguin | 2013-06-17 00:21 | 業務関連

弁護士のちょっとブラックな業務外日誌


by black_penguin